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激戦区で勝ち残ったボーカル教室!

夢を肴<サカナ>に飲んでいた街、下北沢

私は学生時代
世田谷区の祖師谷大蔵に住んでいて、
アルバイトをしていたのが
三軒茶屋の近くにある
世田谷通り沿いの
ファミリーレストランでした。

深夜2時閉店後、
バイト仲間と飲みに行っていたのが
下北沢だったのです。

下北沢と言えば
いまやオシャレな店も多く、
東京で住みたい街No2(「東京ウォーカー」 2011年度ランキング)に
選ばれるほどですが、
私が飲み歩いていた
1990年代前半は
古びた個人経営的なお店が多く、
むしろ小汚い古びた街だったように思います。

下北沢は
昔から小劇場やライブハウスが多く、
役者やミュージシャンを夢見る若者や、
近くに大学もいくつかあるので
学生も多い街です。

朝までやっている安い飲み屋も多いので、
昔も今も『将来ビックになってやるんだ!』
という夢を肴に
仲間と飲んでいる若者の活気であふれています。

約20年前、私もその1人でした。

 
当時まだ私は大学生で、
下北沢で酒・タバコを覚え、
少し大人の気分にもなっていましたが、
社会人としての実績は無く、
どんな仕事をしたいのかさえも
分からずにいました。

 
それなのに、
『今に見ていろ!』という強い気持ちだけ
ギラギラしていたように思います。

 
大学卒業後は金融業界に飛び込み、
東京・シンガポール・ニューヨークで仕事を経験し、
ボストン大学に留学した後、
日本に戻って住んだのが
また下北沢でした。

2003年に約10年ぶりに帰ってきたのですが、
街の変わりように私はとても驚きました。

 
オシャレな店が立ち並び、
街の規模も以前の2倍程の大きさに
広がっていたので、
まるで浦島太郎でした。

 
学生時代よく行ったお店の多くが無くなり、
新しいお店になっていました。

 
ただ、
いくつかのお店は昔のまま残っていたので、
懐かしさと嬉しさのあまり入ってみた所、
「この店の壁ってこんな汚かったっけ?」とか、
「この店って、こんなタバコ臭かったっけ?」と、
キラキラな思い出の中にある
お店の印象と何故かどこか変わっていました。

学生時代は
こんな店がいいと思って通っていたんだなと
思いつつ、
少し時間が経ったことと、
少し自分が大人になったことに気付きました。

 

自分の原点 下北沢でボーカル教室開校

ボーカル教室開校するにあたり、
どこの街に開校するかは全く迷いませんでした。

それはもちろん
自分の原点でもある
音楽の街、下北沢です。

 
実績もお金も無い大学生だった自分が、
『今に見ていろ!』という思いで
飲んでいたこの街で、
『音楽を仕事にする』という
自分の夢を叶えようと決心したのです。

 
2003年夏、
私は下北沢の街を一人で歩いていました。

 
ボーカル教室を開校する
物件を探していたのです。

この時、
私は最初のカベにブチ当たっていました。

そのカベとは、
下北沢にボーカル教室に適当な物件どころか、
物件そのものが無いのです。

下北沢をご存じの方は
お分かり頂けるでしょうけれども、
下北沢は道路や商店街に面した
建物だけが商業用物件として利用されており、
一歩路地に入ると民家になっています。

つまり、
お店を出せる物件の数が
限られてしまっているのです。

 
一方、
下北沢にお店を出したいと
思う人は世に溢れているので、
需要と供給のバランスが崩れており、
家賃が『言い値』と言っても良いくらい
バカ高くなっています。

住居用に物件を借りる場合には
礼金・敷金というものがありますが、
商業用に物件を借りる場合には
保証金を納めなければなりません。

この保証金は
家賃の○ヶ月分という具合に
なっている場合が多く、
街によって相場が異なります。

 
通常8~12ヶ月分くらいなのですが、
下北沢では
なんと20ヶ月分というのも珍しくありません。

私も商業用物件を探して初めて知りましたが、
もちろん物件にもよりますけれども、
下北沢は原宿や表参道にお店を出すより
初期費用がかかるのです。

 
しかも、
下北沢を歩く人の多くが
役者やミュージシャンを夢見る若者や学生で、
お金を持っているとは言えない
(私も実際そうでした)人たち。

 
サラリーマンやOLで溢れ、
近所に富裕層も多い原宿や表参道に
お店を出した方が
賢明であることは誰にも明白です。

 
約10年ぶりに下北沢に帰ってきて、
昔あったお店の多くが
閉店してしまっていた理由も
それで分かりました。

以前から下北沢にあるお店は
コロコロ変わるのが早いなと
思っていたのですが、
自分がお店を出そうという
段階になって初めて
この街の現実を知ってしまったのです。

 
下北沢は東京で一番、
おそらく日本で一番お店を出して
成功するのが難しい街であることを・・・。

下北沢での開校を
諦めるべきか否か迷いつつ、
猛暑の中、
フラフラになりながら
物件を求めて
私は一人下北沢を歩き回っていました。

 
『閉店セール』という張り紙がしてあると、
『どこかに移られるんですか?』と、
店員さんに直接聞いてみたり、
何軒も何軒も不動産に足を運びました。

そして、
辿り着いたのが
普段は自分もあまり訪れたことのない
下北沢駅西口近くにある不動産屋さん。

そこで、
『ボーカル教室を開校したいんですけど、
良い物件ありますか?』と尋ねると、
『あ~、1つありますよ、いや2つかな?
とりあえず見に行きますか?』と
応対してくれたのが、
その時はまさかその後
長いお付き合いになるとは思っていなかった
小野田さんでした。

 
ご紹介頂いた最初の物件は
マンションの1室で
パッとしなかったのですが、
2つ目にご紹介頂いたのは
下北沢西口から徒歩10秒。

井の頭線のホームから
目の高さで見える場所に立地し、
物件としては最高でした。

 
しかし、
ここで立ちはだかったのは家賃。

予算をはるかにオーバーしていたのでした。

予算ありきか、物件ありきか・・・。

ビル・オーナーは
そのビルの一階で
歯医者さんをされている河瀬さん。

大柄な方で、
初対面の時からニコニコほがらかに
応対して下さいました。

 
『ボーカル教室を始めたいのですけれども』と
ご相談すると、
『ボーカル教室ですか、へぇ~珍しいですね。
うちで良かったらどうぞ、どうぞ。』
と言って下さったのが、
まるでつい最近のようです。

 

開校前夜~腹を決めた夜~

こうして物件が決まり、
防音ブースを業者さんに設置して頂き、
家具・文具を揃えて内装は
私一人でボーカル教室用に仕上げていきました。

2003年9月13日開校に向けて
もう一カ月もなかったので、
準備を進めて行くうちに
ワクワクする気持ちと裏腹に、
不安も急速に高まっていきました。

 
先に調べておくべきでしたが、
『そう言えば下北沢にボーカル教室ってあるのかな?
あるとすれば何校あるのかな?』と調査した所、
なんとすでに
5校もボーカル教室が存在していたのです。

出店が難しい上にライバルが5校。

開校前なので当校に生徒さんはまだ0人。

物件の保証金・前家賃、防音ブース、
家具・文具、広告費と
お金は出て行くばかりで、
銀行口座からは数十・百万円単位で
みるみるうちに残高が減って行きました。

そして、迎えた開校前夜。

私は深夜、明日の開校に向けて

最後の準備を一人でしていました。

 
体験レッスンの申し込みは
すでにありましたが、
『体験レッスンの申し込みをして下さった方は
明日本当にきてくれるのだろうか?』、
また『誰も入校してくれなかったどうしよう?』
と不安は極限に達していました。

 
教室の待合室用に購入した長椅子に横たわり、
天井を見上げていたら何故か
『明日、もし入校してくれる人が1人でもいたら、
自分はここに住んででも続けよう。』
という思いに至りました。

こうして腹を決めることができ、
晴れやかな気持ちで開校当日を迎えました。

 
嬉しいことに、
体験レッスンを受講された方のほとんどが
入校して下さいました。

こうしたことが連日連夜続き、
同年12月には生徒さん50名、
翌年4月には100名の生徒さんに
在籍して頂ける教室になりました。

 
以来、
ずっとLavocボーカル教室は、
ほぼ常時100名を越える生徒さんに
在籍して頂いてきました。

開校当初は必死でしたし、
それからも順風満帆であったことは
一度もありません。

赤字に転落することもありました。

 
しかし、
苦しいことがあると、
開校前夜のことを今でも思い出します。

 
『あの日に比べると今の方がずっとマシじゃないか。
赤字と言っても、生徒さんは0人じゃないし、
スタッフという仲間もいる。』と開き直って、
また頑張ることが出来るのです。

そして、
ある時開校当初下北沢にあった
ボーカル教室5校のうち4校が
姿を消していることにふと気付きました。

それに気付いた時、
色々な思いが巡りました。

『自分の教室が生き残れたのは何故だろう?
偶然?必然?』そして、
『明日は我が身かも』と背筋がゾッとしました。

 
きっとこれからも良い事ばかりではないでしょう。

考えたくもありませんが、
また赤字に転落することもあるかもしれません。

 
しかし、
もしそうなったとしてもまた、
『あの日に比べると今の方がずっとマシじゃないか。』
と奮起し、
立ち上がるのでしょう。

 
そして、
またいつか振り返った時も、
お金も実績も無かった頃
『今に見ていろ!』と思って過ごしたことを
思い出したいと思います。


2018年10月
下北沢校は惜しまれつつクローズとなりました。
ご存じの通り、下北沢は再開発が進み、
時代の流れに沿うのも致し方なしの状況でした。
15年間のご愛顧、本当にありがとうございました。

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