当校が創業した2003年当時、ボイストレーニング・スクールと言えば、プロ志望者を対象とするスクールが主流でした。
HPを見れば、『過去に誰がデビューした!』かとか、『どこどこのレコード会社とタイアップしたオーディションやってます!』のようなことをアピールしていました。
但し、単価が高く、かつては、入会時に5万円前後の教材を購入することが普通でした。
月謝は2万円~3万円。この他に入会金もあったので、初月費は教材費+入会金+初月月謝で、10万円近くかかっていました。
【対象は誰なのか?】について
実は、ボイストレーニング・スクールは各校対象としている生徒の層が、かなり異なります。生徒の層は、大きく分けて2つあります。
- A:プロ志望者
- B:ビジネスマン・OL
A:プロ志望
今では、単価も抑えられたビジネスマンを対象とするボイストレーニング・スクールが多くなったので、プロ志望を対象とするボイストレーニング・スクールも単価を抑えていますが、依然やや高めです。しかも、レッスンはグループ・レッスンが主流。
また、プロを目指すには、相当の努力を要するので、習ったことを次回レッスンまでに出来るようになっているのは当たり前に求められます。
ダメ出しも当たり前。お金を払っているのに、叱られることもしばしばあります。
プロ志望を対象とするスクールが得意とするイベントは、デビューを目的とするオーディションです。
レコード会社のスカウトや、音楽関係者を呼んで審査・採用を目的とするイベントが開催されています。
B:ビジネスマン・OL
『プロを目指す訳ではないけど、学生時代少し音楽もかじったので、そこそこ本気でやりたい!』そう思う大人は結構いるのではないかと思い、私(代表 平田)は創業しました。
当時、代表が勤めていた会社の同僚数名に、『こんなボイストレーニング・スクールを考えているんだけど、どう思う?』と聞いた所、『金払ってまで、歌を習いたいとは思わないな』と全員が答えました。
しかし、ふたを開けてみると大反響。
但し、予想外だったのは、私(代表 平田)のように音楽経験が多少あるビジネスマンより、全く経験のない、音楽に自信が無い人の割合が多かったことでした。
ビジネスマンを対象とした場合、歌いたい曲も、通えるスケジュールも多種多様になります。
創業当初はグループ・レッスンも試してみました、限界を悟り、早々にマンツーマン主体に切り替えました。
趣味で歌を楽しみたい生徒さんばかりなので、教えると言うより、とにかく楽しんでもらうことを主眼に取り組みました。また、料金もビジネスマンの習い事と言えば、月額1万円前後が相場。それに見合うように、カリキュラムも整備しました。そうすると、安さに魅せられてプロ志望の若者も通う子もおり、常に一定数在籍しています。
ビジネスマン・OLを対象とするスクールが得意とするイベントは、教室内発表会です。生徒同士の交流を図り、歌好きのコミュニティ作りを大事にしています。イベントは学生時代の文化祭ライブさながらです。
【ボイストレーニング専業、もしくは兼業】について
ボイストレーニング・スクールには、専業と兼業があります。また、兼業には楽器クラスとの並行と、話すボイストレーニングとの並行の2パターンがあります。
- A:楽器クラスと並行
- B:話すボイストレーニングと並行
- C:歌の専業
A:楽器クラスと並行
大手楽器メーカーが展開している音楽教室にも、歌のボイストレーニング・クラスが存在する場合があります。しかし、本業は楽器製作と販売なので、メインは楽器クラス。ボイストレーニング・クラスはあってもおまけ程度である場合が多いです。楽器クラスへの勧誘もあります。
楽器クラスも、ボイストレーニング・クラスもグループ・レッスンが主流。生徒が歌いたい曲ではなく、講師が選んだ課題曲をみんなで一緒に練習します。
楽器メーカーが得意とするイベントは、合奏と合唱の発表会です。
B:話すボイストレーニングと並行
話すボイストレーニングは、声優・俳優・アナウンサーを目指す方などが取り組むボイストレーニングです。一方、歌うボイストレーニングは、歌手を目指す方が取り組むボイストレーニングです。一口にボイストレーニングといっても、話すボイストレーニングと歌うボイストレーニングでは、必要となる技術は実は真逆なのです。
代表的な真逆のポイントには3つあります。1つ目は活舌。話すボイストレーニングでは活舌良く話すことが求められますが、歌うボイストレーニングは滑舌良く歌ってはなりません。むしろ子音などは、母音に乗せていくようにします。
例)
最後のキスはタバコのフレーバーがした(First Love、宇多田ヒカル)
⇒さぁぁいぃぃごぉぉのぉ きぃぃすは たばぁこのふれいばあぁがしぃたぁ
話すボイストレーニングでは、活舌の練習が核となります。外郎売(ういろううり)による滑舌練習などは定番。一方、歌うボイストレーニングでは、話すボイストレーニングのような滑舌練習もしますが、核ではなく、練習の1つ程度です。
2つ目はリズム。話すボイストレーニングは、一定のスピードで話すことが求められます。速くなったり、遅くなったりすると、矯正されます。声優・俳優は、感情を込めて話すときなどは、多少話すスピードが変化する場合もありますが、基本的にはスピードは一定です。
一方、歌うボイストレーニングは、一拍の間に入る言葉の数が異なり、自然とリズムも変わります。
例)
。。。あ。るぅ。ひ。。。もり。の。なか。。。くま。さん。に。。。
また、洋楽などはリズムにグルーヴ(卵が転がるリズムのように、速くなったり遅くなったりが繰り返される)がかかります。
例)
Welcome to the Hotel California(ホテル カリフォルニア、イーグルス)
ウェルカムトゥ・ズィ・ホ~テル・カ~リフォ~ニア
3つ目は音程。話すボイストレーニングは、一定の音の高さで話すことが求められます。方言によく見られるような音の高さの変化は、良しとされていません。一方、歌うボイストレーニングは、音程は変化し続けます。音程が上手く取れないので、歌うボイストレーニング・スクールに通われる方も多いです。
他にも話すボイストレーニングと歌うボイストレーニングの違いはありますが、代表的な違いはこの3つです。実は、こんなにも異なるボイストレーニングを、同じ講師が教えているケースがあります。両方ともプロレベルの技術を持つことは容易ではありません。従って、2つのボイストレーニングを行っているスクールにおいては、『話す』と『歌う』の講師を分けているかどうかが見分けるポイントになります。
話すボイストレーニングと兼業の場合、得意とするイベントは舞台です。ホールや劇場などで、役者志望は役を演じ、声優志望は動画に合わせてセリフを読み、アナウンサー志望は報道記事を読んだりします。歌はおまけ程度に含まれるに留まることが多いようです。
C:歌の専業
歌専門のボイストレーニング・スクールの場合、レッスンはマンツーマンが主流です。
なぜなら、生徒によって歌いたいジャンルや曲が違うからです。
また、声紋は指紋と同様に個人を特定できるほど個性があります。
ひとり一人に合わせたオーダーメイドでないと対応しきれません。
但し、ボイストレーニング未経験の方でも、ある程度の経験のある方でも、基礎が大切なのは同じ。
プロ志望の生徒で、伸び悩んでいたりすると、基礎をひとつひとつ見直します。
基礎がしっかりしていないと、テクニックを学んでも、どうしても小手先になってしまうからです。
なので、習い始めは、未経験者も経験者も基礎練習から始まるのが一般的です。
また、『発表できる場が欲しい』、『習っているだけでは満足できない』のは歌も同じ。
ボーカリストの登竜門と言えばライブハウス。プロを目指す訳ではないけれども、少しプロ気分を味わえます。
歌専門のボイストレーニング・スクールが得意とするイベントは、ライブハウスで歌のライブです。
バンドの生演奏をバックに歌うこともでき、メジャー・アーティストのコンサートのミニチュア版を間近で味わうことができます。