7.42026

録音してみたら「あれ、こんなに下手だっけ?」——「歌ってみた」を始めた多くの方が、最初にぶつかる壁がこれです。
カラオケでは気持ちよく歌えているのに、DAWやスマートフォンで録って聴き直すと音程のズレが気になる。原曲キーで歌おうとするとサビで声が届かない。オフボーカル音源に合わせると、ピッチの外れがいつもより目立つ——こんな経験をされている方も多いのではないでしょうか。
私たちLavocのボーカル講師のもとにも、「もっとうまく録れるようになりたい」「独学で練習してきたけど、なんとなく頭打ちな感じがする」「上手い人との差がどうしても縮まらない」という相談がよく届きます。
発声の土台から見直すことは、遠回りのようで実はいちばんの近道になることがあります。この記事では、独学の練習だけではなかなか気づけないこと、そしてプロのレッスンを受けると具体的に何が変わるのかをお伝えします。
「録音すると下手に聞こえる」のはなぜか
まず少しだけ、声の仕組みの話をさせてください。
私たちが普段耳にしている「自分の声」は、頭蓋骨の内側を伝わる振動(骨導音)が混ざった状態で届いています。この振動のせいで、自分の声は実際よりも低く・太く聞こえやすい。録音した声を聴いて「思ったより細い」「別人みたい」と感じるのは、この仕組みのためです。
※骨導音とは、音が骨を通じて直接耳の内部に伝わる音のことです。録音された声にはこの骨導音が含まれないため、普段自分で聞いている声とギャップが生じます。
オフボーカル音源に合わせて歌うとピッチのズレがいつもより目立つのも、同じ理由です。カラオケのガイドメロディがある状態より、自分の声が「裸のまま」で際立って聞こえるため、普段は気になっていなかった音程のクセが表れやすくなります。
自分の耳だけを頼りに「気持ちよく歌える発声」を磨いていると、マイクに乗る声の良さとズレていってしまうことがあります。歌う本人は「うまく歌えた」と感じていても、録音を聴くと別の印象になる——それはごく自然なことです。
独学で頭打ちになりやすい理由
独学の練習で起きやすいことが、もうひとつあります。
音程がわずかにズレていても、自分では気づけない。声に余計な力みが入っていても「これが自分の声だ」と思い込んでしまう。一生懸命練習しているのに、上手い人との差がなかなか縮まらないと感じる——こういった「クセ」は、外から聴いてもらって初めて見えてくるものが多いんです。
ミックスやエフェクトで補正できる範囲は確かにあります。でも、ピッチのズレ・息のもれ・力みからくる声の詰まりは、発声そのものを整えていかないと、音源の仕上がりにも限界が出てきます。「もう少し声さえ良ければ、もっときれいにMIXできるのに」——そう感じているなら、発声を見直すタイミングかもしれません。
※ここでいうMIXとは、ボーカルと伴奏のバランスを整えたり、音質を調整して音源全体を仕上げる作業のことです。
プロのレッスンを受けると、何が変わるのか
では具体的に、プロのボイストレーニングを受けると何が変わるのかをお伝えします。
① ピッチの「クセ」に気づける
音程のズレには、本人が気づいていない「クセ」があります。特定の音域になると必ずフラットになる、サビの入りで少し上ずる——こうした個人のクセは、外から聴いてもらって初めてはっきり見えてきます。
Lavocのレッスンでは、実際に歌ってもらいながら「さっきのサビのところ、少し下がっていましたよ」とその場で声をかけながら修正できます。録音を後で聴き返して自分で気づくより、スピードがまったく違います。繰り返しのうちに、「ここは下がりやすい」というセルフチェックの感覚も育っていきます。
※ピッチとは音の高さのことです。「ピッチが外れる」「ピッチがズレる」とは、歌っている音が本来の音程から上下にずれてしまうことを指します。
② 高音域を「押し出す」のではなく「支える」感覚に変わる
原曲キーで歌えない、サビで声が届かないという悩みの多くは、「声を力で押し出している」ことが原因のひとつです。喉に力を入れて無理に高い音を出そうとすると、声が詰まってかえって音域が広がりにくくなります。
腹式呼吸でしっかり息を支えながら、喉の余計な力を抜いて高音を「乗せる」感覚——言葉で説明するのが難しい部分ですが、実際に声を出してもらいながらいっしょに探ると、「あ、これか」とわかる瞬間があります。その感覚を体で覚えると、次から再現しやすくなります。
※腹式呼吸とは、横隔膜を使ってお腹を膨らませるように息を吸う呼吸法のことです。胸だけで呼吸する胸式呼吸より、声に安定した息を供給しやすいとされています。
③ 無意識の「力み」が取れていく
「力んでいる」と自分では思っていないのに、録音を聴くとどこかきつく聞こえる——これも「歌ってみた」でよくある状況です。
肩、首、顎……力みが入っている場所は人によって違いますが、どこかに余計な緊張があると声帯がうまく振動できず、声が硬くなりやすい。「なんとなく音が詰まって聞こえる」「伸びやかな声が出ない」という感覚は、こういった力みから来ていることが多いです。
レッスンでは「今、肩が少し上がっていましたよ」「顎をちょっと引いてみてください」というように、自分では見えない部分をその場でお伝えできます。少しずつ取れていくと、声が柔らかくなったと感じる方が多いです。
※声帯(せいたい)とは、喉の中にある2枚のひだ状の器官です。声帯が振動することで声が生まれます。力みが入ると声帯の動きが制限され、声が出しにくくなることがあります。
④ ブレスのタイミングが整う
歌ってみたを録音していると、歌の途中で息が続かなくなってしまったり、ブレスの音がマイクに拾われてしまったりすることがあります。どこで息を吸うか(ブレスポイント)、どのくらい息をためてから歌い始めるか——これは意識しないとなかなか身につかない部分です。
曲ごとにブレスの設計をレッスン内でいっしょに整理しながら歌う練習をしていくと、「息が足りなくなって声がかすれた」「ブレスの音が目立ってMIXで困った」という事故が減ってきます。
※ブレスとは、歌の中での「息つぎ」のことです。どのタイミングで息を吸うかをあらかじめ決めておくことを「ブレスを設計する」といいます。
⑤ 「録音前提の声の使い方」という視点が生まれる
ライブで歌う発声と、マイクで録音する発声は、少し違います。ライブでは客席まで届ける音量感が必要ですが、録音ではマイクとの距離感や息の使い方で音量を調整していく意識が大切になります。大きな声を出すことより、コントロールの精度が問われるんです。
「声量で勝負」ではなく「息と発声の細かい調整で整える」という感覚は、録音向けのボイトレならではの視点です。Lavocのレッスンでは、歌ってみた投稿を目標にしている方に合わせた声の使い方もいっしょに考えながら進めます。
「歌ってみた」とライブの発声、どこが違うのか
少し補足をしておくと、「歌ってみた」用の発声とライブ用の発声には、目的の違いがあります。
ライブは生音が会場に広がることを前提にした発声。歌ってみたはマイク1本に収まる音が前提の、コントロールの精度が求められる発声。同じ曲を歌っていても、声の「届け方」が変わってきます。
さらに言えば、録音された音源はあとから何度でも聴き返されます。ライブはその場の勢いや空気感でカバーできる部分がありますが、録音には誤魔化しが効きにくい。そのぶん、発声の土台がしっかりしているほど、完成した音源の安心感が増します。
私たちのレッスンはライブ向けの発声力も視野に入れていますが、「まず録音でいいものを残したい」という目標に合わせた声の使い方も、いっしょに考えていけます。「どんな場で、どんなふうに歌いたいか」を話しながら、レッスンの方向性を決めていくスタイルです。
発声の土台が整うと、MIXの仕上がりも変わってきます。まずは「今の自分の声の状態」を確かめてみるところから始めてみませんか。
▶ 配信や宅録での声の悩みについては、こちらの記事もあわせてどうぞ。
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